触覚を可視化する

Shiseido ‘KANSEI’ Design Lab

自分の得ている触覚情報をディスプレイに表示して見ることができます。

今、指先にどのくらいの力が加わっているのかやその力の変化などを見ることができます。

なにがすごいのかよくわからないと思いますが、実はこれってなかなか実現できなかったことなのです。

そして、それを可能にしたセンサーが、同じく資生堂が開発したHapLog

例えば、映像や音楽の場合は、目や耳を使って、送られてくる信号を受け取るだけなので、自分の見聞きしているものと、隣の人が見聞きしているものには通常大差はないと考えられます(目や耳に異常がある場合はその限りではありませんが)。

しかし、触覚の場合は、同じものを触るにしても、触る人の触り方によって得られる感覚は大きく変わってきます。
そして、触り方はその人それぞれの経験や身体の特徴(体格や筋力など)によって変わってきます。
そのため、感覚を共有することが難しいのです。

しかし、このシステムを使うと、ものに触れることにより、今指先にどれくらいの力が加わっているのか視覚的にわかります。
それによって、その人のものを触る動作(触動作)もわかります。
さらには、ものに対して適切な動作をしているのか(触り方を変える事で、もっと楽に動作が行えないのか)などの動作改善にも応用ができます。
逆に考えると、適切な動作を行いやすいようにモノの形状を最適化する際の判断基準にもなります。

冒頭でご紹介したShiseido ‘KANSEI’ Design Labは6月30日まで。
資生堂銀座ビルに行けば体験することができます。
普段なかなか意識することの無い触覚の世界を体験してみてはいかがでしょうか。

物に触れたときの感覚がわかる義手

2月5日のBBC NEWSに以下のような記事がありました。

Bionic hand allows patient to ‘feel’
http://m.bbc.co.uk/news/health-26036429

簡単に解説すると、ものを持った時の触感までわかる義手が開発され、火事で腕を失ってしまったAaboさんに装着する手術をしたら成功したというもの。4本の電極を腕の神経に接続して、義手の先に取り付けたセンサ(何を使っているんだろ?)からの信号を神経に送ったところ、Aaboさんはものを持った時に持ったものが丸いものなのか四角いものなのか、目で確認しなくても触覚を頼りに判断することができたそうだ。これは凄い!

義肢の歴史

義手を含め、義肢と呼ばれるものは個々何十年かで大きく進化しています。最初はヒトの手足のような形をしただけの単なる木の棒のようなものだったのでしょう。それが次第に材料や機構が進化し、見た目だけでない実用物としての機能が備わってきました。2012年のロンドンオリンピックに両足義足のランナーとして初めて参加したオスカー・ピストリウス選手のことは覚えている方もいるのではないでしょうか。この選手の装着しているカーボン製の義足は、その性能が補助具としての機能を超越しているとして物議を醸し出したほどのもの。

また、ヒトが自分の意志で動かすことの出来る義手も開発されています。これは、ヒトが筋肉を動かしたときに発生する電気信号を皮膚表面に貼り付けたセンサで検知して、その信号に併せて義手を動かすというもの。上記の例では、胸の筋肉を義手を動かすのに用いています。つまり、胸筋をぐっと収縮させると義手が動くのです。(こっちのページのほうがわかりやすいかも。)

そして、義手はとうとう触覚までも獲得し始めました。今の義手は自分の意志で操れるだけでなく、義手で触れたものの手触りまでわかるようになったのです。これは凄い進歩。今はまだ研究段階ということですが、今後ますます発展していくのは間違いない!

と、ここでいくつか疑問が湧いてくる人もいるのではないでしょうか。

胸筋で動かす義手って変な感覚じゃないの?

触覚がある義手に取り付けたれたセンサは数個しかないけど、それで微妙な感覚の違いはわかるの?

義手から得た触感って、生の手から得られる感覚と一緒なの?

僕自身はこれらのような義手を着けたことは無いし、着けてる人にインタビューしたことも無いので推測でしかないのだけれど、答えはこうなんじゃないかと思います。

胸筋で動かす義手って変な感覚じゃないの?
→最初は変だと感じると思うけど、そのうち慣れて気にならなくなります。

触覚がある義手に取り付けたれたセンサは数個しかないけど、それで微妙な感覚の違いはわかるの?
→わからないと思うけど、慣れてくるとそれで何とかやり繰りできるようになると思います。

義手から得た触感って、生の手から得られる感覚と一緒なの?
→違うと思います。なので、なので最初は丸いものを触っても丸いとは感じないと思う。だた、いずれ慣れてその感覚が丸いものを触った時のものだと思うようになります。

ちょっと適当な回答だと思うかもしれないけど、実際人間の適応能力は凄い。そのいい例がラバーバンドイリュージョンという触錯覚。説明は省略しますが、この実験をやってみると、マネキンの手が自分の手に思えてきます(不気味です)。それくらい人間の感覚は適応するのです。だって、季節や仕事によって指先の皮が暑くなったり薄くなったり硬くなったり指紋が無くなったりしても、あまり意識せず触覚をつかうことできるでしょ?

改めて生物の適応能力には驚かされます。

終わりに

なんでこの記事を取り上げたかというと、実は感覚を持った義手を作るのが僕の大学進学の動機だったのです。そして、その夢のおかげで今は触感計測に関する研究に携わっています。この分野、これからどんどん面白くなりますよ〜!

 

そういえば、フック船長の鉤爪のようなものつけてたけど、あれは義手?(こんなの実際に使っていた人はいるのだろうか?)。